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第二章 再会は最悪で最低6

last update Last Updated: 2025-01-16 17:40:31

いきなりプライベートモードに入ったので私は急に対応できずに困ってしまう。

「紫藤大樹を一日中見てたら、俺なんてカスにしか見えないか。ハハ」

どこまで本気で言ってるのだろう。

でも、杉野マネージャーはお兄さん的存在で一緒にいても苦じゃない。

きっと、こういう人と結婚したら幸せな家庭を築ける気がする。

私も年齢的に大人になった。友人では結婚や出産をしている人もいるので、意識しないわけではない。

今までずっと過去にとらわれてきたので無理かと思っていたけれど、こうやって気に入ってくれている人がいるなら前向きになってみるのも一つの手かもしれない。

食事を終えて、少しだけ歩きながらお土産を見る。ささやかな観光気分を味わおう。

「会社に、ちんすこうでも、買っておくか」

「はい」

千奈津にこのガラスのキーホルダー買おうかな。

「安くするよ」

店員さんに声をかけられて、苦笑いする。

買い物を済ませてからホテルに戻った。

エレベーターを降りてそれぞれの部屋の方向へ歩く。

「じゃあ、また明日もよろしくな」

「はい、お疲れ様でした」

ドアを開けて中に入ると、どっと疲れが出てきた。

「ふぅ……一日終わった」

ふかふかのベッドに横になると、体の力がすぅーっと抜けていく。

かなり緊張していたので疲れた。

もう、眠い。シャワーを浴びて早めに寝なきゃ。

重い身体をなんとか起こすと、ブーブーと携帯のバイヴが震える音が聞こえた。会社の携帯だ。

誰だろう。すごく疲れていたけど、急ぎの用事かもしれない。

「はい。初瀬です」

『俺』

間違えるはずがない。

だって過去に愛した人の声だから。

どうして、なんで電話をかけてきたの?

頭の中が真っ白になった。

でも、きっと、仕事のことでなにか用事があるのかもしれない。

「どうされましたか?」

『声で誰だかわかるんだ?』

「紫藤様ですよね」

私は会社の人間として話そうと心がけた。

『……今、一人?』

「そうですが……」

『確認したいことがあるから、俺の部屋に来てくれない?』

やっぱり、仕事のことだった。

名刺を見て電話をしてきたのだろう。じゃあ、杉野マネージャーに連絡しなきゃ。

「では、杉野と参ります」

『初瀬さんだけでいいです。エレベーターの前に待ってるから。人目につくから早く来て』

「え……、でも」

『疲れてるんだ。早く来て』

ブチッと電話が切れてしまった。

一人
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    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

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    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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